(エピローグ) 鉄筋コンクリートが剥き出しになった、解体途中の廃ビル。 背後から近付いてくる気配に、少しだけ視線を眼下から動かして存在を確かめる。 「父上・・・・」 「何が見える?」 「別に何も・・・・只恭介のことが気になって」 闇の血に目覚めれば迎えに行くと約束した。 そんな自分の心情を察するように、父がそっと肩に手を置く。 その父の、自分のものより幾分か骨ばって太い指を感じながら瞳を閉じた。 「父上、近いうちに恭介を迎えに行こうと思います・・・・」 「ああ・・・・承知した」 低い声。 父の口から発せられるその音に、心が溶けそうになる。 恭介も愛しいと思っているけれど、父へのものとはまた違う。父への愛は心酔にも近い、そんな感情。 置かれていた手に力が込められ、振り向かされる。 振り向いた瞬間唇を合わされて、生暖かい血液を喉に流し込まれた。 「食事だ」 与えられる血液よりも、むしろその唇を味わうように瞳を閉じて嚥下する。 自分の全てを確かめるように。 この存在が自分の全てなのだと言い聞かすように。 |