3 すべてをさらけ出せますか

 

答えはNO

 

出せるはずがない。と思う。

だけど、目の前の親友達を見ていると。

 

伐もひなも。隠していることなんてないような気がしてくる

 

「隠しごと?ないよ、そんなん」

「隠しごとっていうか…すべてを曝け出せる?てことなんだけど」

 

飄々と、そんなことあるわけがないと。何処までもあっけらかんと言い放つひな。

そこにあるのは何処までも本当なのだろう。

ひなに裏表とか、想像が出来ないし。

 

「まぁ…確かに、ひなたには見せられねぇトコとかあるかもしんねぇけど。恭ちゃんには全部曝け出してると思うけどな」

「私には見せれないことって何さ?!」

「いや、それはホラ。女には見せれない部分ってあるじゃねぇか」

「ええ?何それ。男女差別だよ!!」

 

いつも通りの夫婦漫才を眺めながら。

確かに、伐も何も隠してないのだろう。

そして、ふと考える。

 

僕は、何か隠しているのだろうか?

 

秘密にしていること。

知られたくないこと。

 

そんなの当の昔にばれちゃったし。

 

「…あれ?」

 

もしかしたら。

僕はもう既に、曝け出してしまっているのかもしれない。

 

「どしたの?」

 

僕の声に反応して、言い争っていたひながこっちを向く。

 

「…いや、もしかしたら…僕は隠してることなんかないかも、て思って」

 

 

怪訝な二人の顔が、だんだん笑顔に変わる。

 

背中にバン!と。衝撃。伐に力いっぱい叩かれて。

ひなが拳を軽く、僕のハートに打ち込む。

 

「ホラ!恭介も秘密なんかないって言ってんじゃん!私には見せれないことってなんなのさ!!」

 

ハナシは元に戻ったみたいで。

 

始まった追っかけっこを眺めながら。

僕はもう一度、自分の胸の中に問いかける。

 

昔はもっと。自分ですら見渡せないような、まるで霧にでも包まれたような心情だったのに。

何時の間に、こんなにも晴れ渡ったんだろう?

どこまでも見渡せるような、そんな穏やかな心。

誰に見られても恥ずかしくないような、そんな心。

 

 

「恭ちゃん!てめぇフォローしろよ!」

 

遠くから伐が叫んでる。

 

ヤレヤレだ。

 

僕は一度、空を見上げて。

そこに広がってる、僕の心と同じような青空を見て。

 

随分先まで走って行ってしまった二人を追いかけるために、走り出す。

 

その背中を見失わないように。

 

 

  




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イラスト(バンビちゃん)提供 フランクなソザイ 様