ああ、神様。
神様。
貴方が世界に反した私を恨んでいることはわかりました。
だけどあの子は。
あの子だけは許してあげて。
地獄にだって、あの子のためなら喜んで堕ちる。
だから、あの子を。
あの子を護って-------------------------------
§§§§
春。
私は。
発病した。
§§§§
今まで感じたこともない恐怖。
私がいなくなったらこの子はどうなるの?誰が守るの?
時間はどれだけあるの?
私には時間がどれだけ残されているの?
助けて。
助けて。
いえ、あの子が無事に生き延びられるなら、私の命くらい差し出すわ。
だけどそうじゃないなら、私は死ぬわけにはいかないのよ。
あの子を置いて。
あの子を一人ぼっちにして。
ああ、神様。
§§§§
ラーはキラーパンサーを撫でながら、その硬い毛並みに身体を押しつけて、温かいのが心地好いのか、うつらうつらと。
あの日以来住みついたキラーパンサーは、ラーとすっかり中良くなって。ゴロゴロと喉を鳴らして。
2人とも、気持ち良さそうね。
幸せそうな、その寝顔を眺めながら。
私は生きることを決心した。
死んでなんかやらない。
こんな病気なんかで。
私はこの子を守るんだから。
負けない。
負けない。
絶対に。
これから何度でも。
何度でも。
この子の寝顔を。
この子の成長を。
この子の幸福の過程を全て。
ちゃんと見るんだから。
死んでなんかいられないのよ。
§§§§
発病してから死ぬまで、医者はもって半年だと言った。
私は発病してから既に一年が経過していた。
医者は奇跡と言った。
だけどその奇跡は完治まで導いてはくれなかった。
残された時間が。
限界が近付いていることはわかる。
一人では歩くこともままならない。
キラーパンサーに助けて貰いながら、私はラーハルトの部屋の扉を開く。
毎朝の挨拶をするために。
「おはよう、私の天使ちゃん」
ラーに愛を込めてキスを。
ラーもキスを返してくれる。
この子も十歳になった。
確かに大きくはなったけど。
まだまだ まだまだ、ほんの子供。
そして本当に、可愛い。
「母さん、寝ててよ」
「いやよ、ラーの顔を見るのが一番元気になるんだから」
本当よ?
そこらのお薬なんかより、余程。貴方が笑ってくれる方が活力になる。
心配そうな顔、止めてちょうだい。
私は大丈夫だから。
それでも引かないラーハルトに根負けして、私はすっかり住処と化したベッドに潜り込む。
「ねぇ、ラー。体調の良い時に、また夜の散歩に行きましょうよ。
手を繋いで。
キラーパンサーも一緒に」
「うん。体調がいいときにね」
「約束よ?」
「うん、約束する」
約束。
約束。
ほら、これでまた死ねなくなったわよ?私。
頑張りなさい。
まだ。
まだ 生きなきゃ駄目よ。
まだ。
まだよ。
まだ------------------------------!!!!!!
§§§§
私がいなくなったら
この子は生き延びられる?
幸福になれる?
ねぇ?
貴方、どうしたらいいの?
|