03  視線が絡み合った途端

  

繋がる気がする。

それは双子故のシンパシーなのか、それとも僕たちが特別なのか。

 

兄の姿を見付けたけれど。

向こうはこっちに気付いていないようで、小難しい顔をして手に持った書類とにらめっこしている。

こんな機会は滅多にないから、観察することにした。

 

けれど、眺めているとすぐに。

兄が顔を上げて。

 

 

こっちを見る。

 

 

空中で、視線が絡まって。

 

その瞬間。

 

繋がる。

 

 

母の胎内にいた時に、一緒に繋がっていた様に。

断ち切られた今も尚、僕たちは目に見えない何かで繋がっている。

 

 

兄が、ふ、と笑った。

どんな他人にも見せることのない、とても柔らかい笑みを。

 

『今日は一緒に食事が出来そうだ』と。

 

言っているように思えて。

僕は笑みを返す。

 

『それは素敵』

 

 

そして僕たちは再び視線を外して。

元の世界に舞い戻る。

 

正しい答えがあるかどうか解らない。

兄はそんなこと思ってなかったかもしれないし、僕の了承が伝わってない可能性だって勿論ある。

きっと説明したところで、この感覚は体験したことのない人には理解出来ないだろうし。

それについて、一から説明する気もない。

 

だけど。

この感覚が外れたこともない。

 

 

だから僕は二人分の食材を購入しに行くことにする。

調理は面倒くさいから兄さんに任せてしまおう。と心に決めて。

 

絡まる視線の余韻の中、笑みを零した。

 

 

 

 

視線が絡み合った途端。

それだけで物理的距離なんて、関係なくなる。

 

僕達に距離なんて。

存在しないんだ。

 

 

 


背景素材提供 戦場に猫 様