(三)

  

世界の危機の蓋が開く。

そして、私に宣言した通り。あの子は世界の危機側の武器として立った。

 

竜の騎士が、自分の意思で、戦いに参加する。

 

そんなことは、この世界が誕生してから今まであり得なかった事態。

 

それでも。

『戦い』からは逃れられないのか、と。心が痛んだ。

 

そして、竜の騎士に付き従うようにすっかり成長した青年もその身を戦いに落とす。

 

運命から逃れるつもりならば。

竜の騎士としての『戦鬼』としての本能からも逃れて欲しかった、と願うのは母のエゴだろうか?

 

それでも。

私やマリアの前で見せていた我が子の顔は、戦鬼ではなく『父親』のソレで。

目の前にあった情景は、ごく普通の家族の姿だった。

願うなら、血に塗れた戦場ではなく。笑顔の絶えない家庭であってほしかった。

 

それを一度失ったのならば。

それがどれだけ尊いものか理解出来るはずだから。

 

戦場に再びその身を捧げるのは。

再び得ることが出来たソレを、再度失うかもしれない、ということ。

 

それが解らない子ではないハズなのに。

 

 

「…竜の騎士としての本能からは逃れられませんか…バラン…」

 

晴れることのない魔界の空。

それは何処までも重く、暗い雲に塞がれていて先が見えない。

 

それでも、その視線の先にいると信じて。

私は我が子の無事を。

 

今まで以上に強く願った。

 

 

§§§§§§§§§§§§§ 

 

その感覚は。

何度体験しても慣れるものじゃない。

 

それは。

我が子の命が砕け散った感覚。

 

「母様!」

 

神殿の中。マリアの声が荒々しく響く。

マリアも次期、マザーなのだ。

 

感じたのだろう。

 

『兄』の。そして自分を父親のように可愛がってくれた男の『死』を。

 

 

「…迎えに行ってやらなければ」

「マリアも行きます!」

 

まるで深い海のような、底の見えない青い瞳が細波に揺れるように潤んでいる。

マリアは最近、やっと人間の身体から魔族の身体へと変容を遂げようとしていて、その兆候として微かに耳がとがり始めていた。

しかし、まだ。変容はそれだけだ。

竜の力はまだ、ほど遠い。

 

「マリア…状況によっては…戦場を飛ばなければなりません。貴方を背中に乗せて飛ぶことは危険です。

 大人しく、御待ちなさい」

「だって!」

 

「気持ちは解ります…だけど…解っているでしょう?」

 

『バランの命が砕け散ったことを』

 

その言葉は口には出来なかった。

しなくともマリアには解るはずだし、何よりもそれを口にするのは憚られた。

 

今後。

マリアが私の代わりにマザーになった暁には。

迎えに行くのはマリアの役目になる。

それを望むと望まないと。

 

マザーとして生まれたからには、自分の産み落とした子供の死を迎えに行かねばならない宿命を背負う。

 

あの子の未来を。

女としての、普通の未来を思い描いたのはそれ程昔の話じゃないはずだ。

 

その普通の未来に比べて、今私の目の前に広がっている現実はなんと殺伐としていることだろう。

あの日に比べて、今はなんと荒涼としていることだろう。

 

 

あの子、バランは。

これだけの世界の危機のただ中に生まれ落ちた、私の最後の竜の騎士。

立ち位置が変わろうとも、それが変わることはない。

どんな道を歩もうとも、あの子が私の子供でなくなることはない。

それだけは。

それだけはどんなことがあろうとも。

 

 

しかし、羽ばたこうと力を込めた身体は動かなかった。

マリアを産み落とす前から感じていた力が、ここ頓に私の身体を蝕んでいる。

 

身体はまるで鉛のように重い。

羽ばたくために力を込めれば、翼が根元から千切れてしまいそうな痛みを覚える。

 

世界の危機とともに、暗雲と一緒に蝕むコレはきっと呪いなのだろう。

そう、我が同胞であるはずの瞑竜が遺した。

我が子の手によって封印されし、呪われし竜の。世界への、最後の呪い。

 

それが私の身体を蝕んでいる。

 

「母様…?」

 

動けない私を心配して、不安の声をあげるマリアの姿に。

私は心痛を覚える。

 

私もまた、今砕け散った我が子と同じく、時間が残されていない。

きっと近い将来、幼いこの子を置いてこの身体は朽ちてしまうだろう。

 

この子は、次のマザーとして生きる。

そして自分の子供を生贄として捧げ続ける。

 

私と同じ、生き方を。

 

 

ふ、と。

考えてはいけない思考がよぎった。

 

 

今なら、神はこの子を感知していない。

竜の騎士と違って、マザーは神の命令によって次代を産むわけではない。

次代を産むのは、マザー自身の意思だ。

だから、今はまだ神はマリアの存在を知らない。

 

だから。

 

私がこのまま、最後のマザーとして生を全うすれば。

次のマザーが生まれていないことにすれば。

 

次の『竜の騎士』を生み出す術は失われる。

 

そうすれば、マリアはマザーとしてではなく。

ただの『女』として生きることが出来る。

 

 

自分の子供を生贄として捧げ続けなければならない運命を送らなくても済む。

 

それは。

なんとも。

 

甘美に思えた。

 

 

「マリア……」

 

呼びかけに、心配そうなマリアの顔が。

まだまだ幼い、娘の不安そうな顔が。

 

 

心が揺れる。

しかし、私は行かねばならない。

行かねば、バランの魂は彷徨うことになる。

 

本来、その誕生と死の瞬間にしか逢わない筈の親子の。

母として与えることが出来る最後の安らぎ。

 

他の生命は神の(かいな)によって魂は回収され、世界樹の麓にて浄化され、次の輪廻へと旅立つことが出来る。

余程、世界に未練がない限り。

死して肉体を離れた魂は、繋がっていくのだ。

 

だが、他の生命と違って単一生体、マザードラゴンによって処女懐胎する竜の騎士は、魂を回収されなければ永遠に彷徨ってしまう。

マザーによって回収、次の竜の騎士に引き継ぐことで輪廻は紡がれるのだ。

 

そう。

自分が迎えに行ってやらないと、バランの魂は永遠の煉獄に彷徨うことになる。

 

 

ぐぐ、と。身体に再び力を込める。

 

が。

 

やはり、身体は重くて言うことを聞かない。

 

 

この重たい肉体を棄てれば、魂だけのエネルギー体となれば。

バランの魂を回収することは可能だろう。

 

しかしそれは即ち、肉体の死を意味する。

 

 

「…マリア…」

 

目の前の、不安な顔をした幼い娘。

そして、砕け散った私の雄々しい息子。

 

選ぶ、選ばない、ではない。

どちらも。

 

どちらも私にとってはかけがえのない存在。

 

 

残された時間は少ない。

残された時間はどっち道、少ない。

 

私がこの子を置いていく事実は変わらない。

 

遅かれ早かれ。

 

そして、私の後。

彼女は私の後を継いでマザードラゴンとなる。

そして、あの悲しみに耐える。

この痛みに耐える。

 

何度も、何度も。

何度も、何度も。何度も。

 

産み落としては、戦場へと送り出す。

自分の手で育てることを許されず、取り上げられる。

 

我が子が死んだ時にしか、再会が許されない。

 

そんな、何処までも殺伐とした情景。

 

 

それは。

耐えられなかった。

 

 

§§§§§§§§§§§§§

 

 

「マリア…………私は………マザードラゴン失格かもしれません。

 けれど、貴方を愛していますよ」

 

 

私は決意する。

この身体を棄てる覚悟を。

 

 

§§§§§§§§§§§§§

 

 

竜の騎士の魂を追いかけて辿りついた場所で、私は目の前の少年に一瞬。戸惑った。

それは私が産み落とした竜の騎士ではなく。

また、竜の騎士であるはずなのに、竜の騎士として戦場にでるには余りに幼かった。

 

もしかすると、私の知らない場所で新たなシステムを神が創り出そうとしている?

 

歴代の竜の騎士の身体に比べるべくもない程、小さく幼いその四肢を抱いて。

私は空へと舞い上がった。

 

確かに。

感じたのはバランの魂の砕ける音。

しかし、目の前にあったのはバランではない。

 

混乱するが、それでも。

竜の騎士には変わりがない。

世界の危機と戦って、その身を窶した竜の騎士に他ならない。

 

それならば、母として。

この身体を使って、その魂を癒すことに疑問はない。

母として。

墓ではなく、再び我が胎内へと抱く。

 

 

そんな矢先、少年が意識を取り戻した。

 

「……こ…、ここは…?         

 お、おれは…助かったのか…?」

 

言葉ひとつとっても未だ幼さの残るソレは、否応なく置いてきた幼い娘を思い出させた。

なので、真実を伝えることにほんの少し、胸に痛みが走る。

 

『いいえ あなたは死にました』

 

言葉が優しく響けばいい、と願いながら紡いだ言葉に。大仰な程の声で少年は返してきた。

 

「だっ…だれだっ!!?」

 

命を遂げた竜の騎士に『誰だ?』と問われたことは今まで一度もなかった。

彼らは自分の命が潰えた時に母が迎えに来ることは知っているから。

 

この子は一体、なんなのだろう?

 

疑問を抱くもそこに危機感を感じないのは、彼から邪悪さは感じない為か。

それとも、彼が紛れもなく竜の騎士であるからか。

 

竜の騎士に。

本来は自分の子供である竜の騎士に自己紹介する可笑しさを感じながら、私は告げる。

 

『私は聖母竜マザードラゴン。竜の騎士の生と死を司る神の使い』

 

「マザー…ドラゴン…!!? …そうか

 そういえば竜の騎士が死んじゃうと次の竜の騎士へ紋章の力を継がせるために伝説の竜が来るって言ってたっけ…

 じゃあ…おれはやっぱりもう死んじゃったのか…」

 

ぽつり、と。

幼い子供が自分の死を『やっぱり』と受け入れる。

それは異常に見えた。

こんな年の子供が『戦場』で『死ぬ』ことを、こんな簡単に受け入れている。

 

そう。

この子供は。

 

紛れもなく、竜の騎士だ。

 

その異常さ故に、私は痛感する。

 

 

「じゃあ おれの代わりに新しい竜の騎士が…」

 

『………』

 

私は言葉を飲み込んだ。

 

新しい竜の騎士。

この子の魂を吸収して、次の新しい竜の騎士を産む。

 

マザーならば、それは決して拒むべくもない事。

しかし。私は決意していたのだ。

 

『新たな竜の騎士は生まれません。あなたが最後の騎士です』

 

次の竜の騎士は、生み出さないと。

 

 

 

「ええっ!!?ど…どうして!!?」

 

少年が狼狽する。

 

 

『竜の騎士とは人と 魔族と 竜の神が、世界のバランスを崩す者を倒すため 

また、争いを無くすために生み出した種族です。

 でも長い長い歴史の間に悪しき者の力はますます強大になっていきました。

 もはや竜の騎士の力をもってしても悪を制裁できないのです…』

 

 「そっ そんなっ…!!!」

 

強い子を産んでも、強い子を産んでも。

その度に、命を差し出す戦いになった。

どれだけ強い子供を産めば、失わないと安心出来るだろう?

どれだけ強大な力を持てば、我が子は生き残れるのだろうか?

 

強大な力を持って生まれても、同じように強大な力をもった悪と戦わなければならない。

我が子が強大であればある程、敵もまた強大になる。

(そもそも、強大な敵を察知して誕生する竜の騎士だ。それだけ力をもって生まれるのは、強大な敵と戦わなければならないということに他ならない)

 

 

『だから私は竜の騎士の歴史を閉じることにしたのです。

 …なにより、今の私はある邪悪な力によって命が尽きようとしています。

 今 あなたを迎えに来たのは私の精神が生み出したエネルギー体…いわば仮の姿なのです…』

 

「…じゃあ…もう誰にも大魔王バーンを止めれないのか…?

 世界の破滅をくいとめられないのか…?」

 

少年はそれでも。

何処までも竜の騎士であるように、戦いを求める。

その姿は、弱者からすれば勇ましいのかもしれないが母親から見ればあまりにも痛々しかった。

 

戦いによって、その命を落としたというのに。

それでも尚、世界の破滅を食い止めようと足掻こうとする。

 

その姿は人間の言う『勇者』と呼ばれるものかもしれない。

『英雄』と呼ばれる姿かもしれない。

 

しかし、母親として。

誰が自分の子供が『英雄』となることを望むのか。

『英雄』となって、世界の礎となることを、どの母親が願うというのか。

 

 

『…さぁ もう辛い戦いはお忘れなさい。        

 あなたの魂とともに…私も天へ帰りましょう』

 

我知らず、少年から目を反らした。

これは自分が生み出した竜の騎士ではないけれど。

その姿は今まで失った多くの我が子と重なった。

 

激戦の末に傷つき倒れ、死んでいった我が子達。

死しても尚、自分が死んだことに気付かずに敵を探し続ける我が子達。

 

拳が裂け、骨が折れ、半身を焼かれ、臓腑を撒き散らしても、それでも尚。

世界のために戦おうと立ち続けた我が子。

 

血に塗れた、痛ましい魂を次の戦場の為に癒す。

それはドレ程空しいことか。

 

しかし、それももう終わる。

私は次の竜の騎士を生み出すことはない。

 

この魂は浄化されたまま、次の戦場へ向かうことはない。

母の胎内に抱かれて、安らかに眠れる。

この空しい連鎖に終止符を打てるのだ。

 

だが。

 

 

『……!?  ……おかしい…        

 あなたには魂がふたつある…』

 

その瞬間、融合していた魂がぶるり、と震えた。

そして静かに形を成す。

 

 

『……あなたは…バラン……』

 

「…母なる竜よ 私が真の最後の騎士、バランです。…あなたが感知したのは私の死だ」

 

そう、確かに私は我が子の魂が砕け散ったのを感知した。

私は目の前に立っている、我が子を見つめる。

 

私の子供。

最後の我が子。

 

そう。

 

この子は最後に逢った時のように、竜の騎士ではなく『父親』の顔でそこにいた。

 

「この子、ダイは私と人間との間に生まれた混血児だ…」

 

『ま…まさか…そんなことが…』

 

人間を愛したと告白したあの日。

子供のことについては何も言わなかった。

 

私はダイを見つめる。

 

竜の騎士が子供を成す。

そんなことが起こるのだろうか?

マザーを介入しないで子供を成すことが?

 

しかし確かに目の前には、竜の騎士が二人。本来一人しか存在しないはずの竜の騎士がふたり、存在している。

それは疑いようもない事実。

 

逡巡する私に追いすがるように、バランは一歩前に出た。

 

 

「母よ、この子の命はまだ完全に尽きてはいない。                    

 どうかもう一度だけこの子にチャンスを与えてやってほしい……!!」

 

 

チャンス。

チャンスとはなんだろう?

 

この子は竜の騎士。

きっと、生き返ればこの子は戦いに身を投じるだろう。

自分が望む、望まないに関わらず戦い続けるのだ。

 

今、やっと戦いから解放されたと言うのに。

 

 

『…たとえ生き返らせても地獄の苦しみを味わわせるだけになりますよ』

 

貴方が戦場で味わったように。

口にはせずに。けれど心の中で痛い程叫ぶ。

 

私の心情を理解しながらも、バランは小さく首を横に振った。

 

 

「…私はそうは思わない。                          

 この子には普通の竜の騎士にはない力がある。いや、力を越えた何かが…」

 

『し…しかし…』

 

何かがあったとしても、その身体を傷だらけにして。命をかけ戦場を駆けることには変わらない。

 

地獄の苦しみには違いない。

 

私は目の前の子供を見据える。

 

やはりバランも竜の騎士なのか。

何処までも、竜の騎士なのか。

戦場を駆け、戦場に生き、戦場に散る。

それが本望だ、と。

それが生きる意味だ、と。

それが存在理由だ、と。

 

それならば。

この子はなんて痛々しいのか。

 

眩暈すら覚えそうになる。

 

『…バラン…』

「……頼む …母よ…!!」

 

しかし、私を遮るその声に。

戦いを望む戦鬼以外の色を見て。

私はその、血を煮詰めたような濃い、真紅の瞳を覗きこむ。

 

そして、そこに見えたのは。

 

 

それはただ、ただ。

 

親のソレだった。

 

 

理由はどうであれ。

我が子を生かしたいという、親のソレだった。

 

縋れるものならばそれが吐き捨てた神だろうが縋るだろう。

ただ、自分の子供が生き続けること、それだけを胸に。

 

バランも解っている。

それが再び、この子を戦場に送りだすことだということを。

 

それがどれだけ残酷なことかも解っている。

 

しかしそれでも尚、このまま死んでしまうのと。

万が一でもバーンを倒し、生き延びてくれるのと。

 

その僅かな、ほんの僅かな可能性にも縋ってしまうのは。

 

それは親としては当然の姿で。

 

 

そして、それは我が子が私に見せた最初で最後の我儘だ。

それならば、私がすることは。

私が出来ることは。

 

 

『…いいでしょう                                    

 いずれにせよ私にはもうエネルギー体のこの身体以外に力が残されていません。

 これをダイに与えましょう』

 

 

母として。

何も貴方に与えてあげられなかった母として。

そして、祖母として。

初めて逢った孫に出来る唯一のこととして。

 

私はこの魂を捧げましょう。

 

『しかし、このエネルギーを与えてしまえば貴方の魂を回収することは出来ません、バラン…

 貴方の魂が安らぎを得ることはない…』

 

バランの魂は暫くはダイの中で留まることが出来るが、人の身体の中に二つの魂が共存することは出来ない。

結果、バランの魂は永劫報われることなく、安らぎを得ることなく、癒されることなく彷徨うことになる。

 

自分の人生を世界の為に捧げた竜の騎士の末路にしては、それはあまりに過ぎる。

 

私の声は、つい悲痛になってしまう。

しかしそれをやんわりと。

 

バランは遮った。

 

「母よ。                     

 貴方と精霊に抱かれた数カ月、私は安らかだった。

 

 ダイの母親であるソアラと出会い、育んだ三年間。

 私は安らかだった。

 

 ラーと出会い、育てた十一年間。

 私は安らかだった。

 

 ダイと共に戦った数時間。

 私は安らかだった。

 

 母よ。           

 私は安らかだった。

 

 だから。         

 嘆かないでほしい。  

 悲しまないでほしい。

 私は幸せだった。

 

私は幸せであったのだから」

 

 

幸せだった、と笑う。

私はこんな風に、自分が幸せだったと言う竜の騎士を見たことがない。

皆、傷付き、疲弊して、絶望していた。

 

私の最後の子供は。

同じように、傷付き、疲弊し、絶望しながら。

それでもその中で幸せを見付け、笑った。

 

 

「…貴方は竜の子…私の自慢の子」

 

 

これからどれだけの時間、貴方は彷徨うのだろう?

安らぎも、癒しもない、その暗い煉獄で貴方はそれでも尚、幸せだったと笑うのだろうか?

 

 

きっと。

 

 

それでも、貴方は笑うのだろう。

 

貴方は歴代の竜の騎士の中でも最強の力を持って生まれた、とても強い子だから。

 

貴方はきっと。

 

 

笑うのだろう。

 

 

最後に。

キスをするように、バランに鼻先を押しつけて。

 

 

私達はダイの中へと融け合っていった。

 

 

 





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